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傷の最新治療

[2017.09.29]

今日は、傷の治療です。

傷は、自然に治癒していきますが、その方法によって治癒の早さや、治癒後の傷の状態はかなり異なってきます。

昔は、手術の後の縫合創を含めて、消毒薬を塗って、布のガーゼを貼付け、絆創膏で留めておく、というのが一般的でした、今でも、一般の方にはこの方法が常識だ、と思っている方も多いでしょう。

時代が進むと、使う材料も少し進化して、大きな絆創膏の中心部にガーゼを貼付けたものを貼付ける様になりました。いわゆる救急バンを大きくした物です。これでも、消毒薬を使っていたものです。

この方法は、傷には細菌は大敵で、細菌がいる事によって傷が化膿し、治癒が遅れる、と考えられていたのです。また、傷の治癒には1週間程度はかかり、その間はそのような処置が必要、と考えられていました。

今では、その考え方が大きく変わっています。

20年ほど前に、湿潤保護、という考え方が出てきました。恐らく、その考え方は、口の中などの粘膜の傷は、結構大きな傷でも数日経つときれいに治っていますね。それを応用した物では無いかと思います。

また、消毒薬が、健康な肉芽の生成にたいして毒物として働く、という考え方も出てきました。つまり、消毒は傷の治療にしては行けない、という事です。

その頃より、私は傷の修復にはこの考え方を採用し、非常にいい結果を得ています。

最初の頃は、ポリエチレンのラップ(代表的なのがサランラップですね)で傷を多い、絆創膏で周囲を留めておく、という方法でした。ラップの良い所は、中の観察が簡単な事です。

受傷後、まず、傷の中の異物を除くために、水道水で十分に洗います。わざわざ蒸留水などを使う必要はありません。消毒薬も使いません。ざっと水気を取った後に、ラップをはり、周囲を留めておきます。傷は、最初はふやけた様に白くなってきて少しふくれてきます。その後、全体が鮮明な赤い色に変わってきます。健康な肉芽が出来てきた証拠です。その後、上皮が再生し、奇麗に治ります。もちろん、その間は消毒はしません。最近の感染、いわゆる化膿は、ほとんど起きません。よほど大きな傷でない限りは、5日もすると治っています。従来の毎日消毒、ガーゼ交換ですと1週間以上はかかっていたのと比べても、ずいぶん早いです。

今は、材料も進化しており、ラップは使いません。一般にも手に入るのが、キズパワーパットや○○パッド等の名称で売られている浸潤療法目的の物です。少し高価ですが、治癒までの費用は同じ程度です。手術後の傷には大きな物が必要ですので、専用のパッドを使っています。これらの材料は、傷に張っていると、周囲の水分を吸収してゼリー状に変化し、少し膨れてきます。そこに水分を逃がさない空間を作ります。これが、傷の修復に取っていい環境になります。よほど血液が貯まってくるなどの状況が無ければ、数日間はそのまま様子を見ていても良いでしょう。自然に剥がれてくる頃になると、傷はほぼ修復しています。

傷が早く、しかも奇麗に治るため、この方法が優れていると言えるでしょう。

ただし、全ての傷にこの方法が有効では無く、すでに化膿しているもの、熱傷(やけど)には使わない方が良いでしょう。また、途中で化膿してきた物も、注意した方が良いでしょう。

昔の常識は、今のうそ、というお話でした。

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